歯科の二大疾患は齲蝕(虫歯)と歯周病です。歯周病は成人の約80%が罹患しているといわれ、歯を失って、入れ歯が必要になっている人の多くが歯周病で歯を失っています。
歯周病とは、口の中の細菌によって引き起こされる感染症です。歯肉や歯槽骨(歯を支えている顎の骨)などの歯周組織を破壊していくようになります。
一般に歯周病は、[1]歯肉炎と[2]歯周炎に大別されています。歯肉炎は歯肉に限局した炎症で、歯周炎は歯肉炎が進行して歯槽骨まで破壊や吸収が進行したものをいいます。
炎症を助長する要因( リスクファクター)には、[1]局所因子、[2]全身因子、[3]環境因子 といったのもがあり、これらが関与し合って発症する疾患が歯周病です。
[1]局所因子
口腔不衛生(歯垢、歯石)。病原性細菌。咬み合わせの不具合(不適切な治療、歯ぎしり、食い しばり、舌習慣)。歯並び。歯の形態。など
[2]全身因子
年齢。人種。体質。免疫学的異常、遺伝的疾患。ホルモン分泌異常。糖尿病。骨粗鬆症。など
[3]環境因子
喫煙。ストレス。栄養バランス。不規則な生活。など
これらの 因子をできるだけ改善していき、免疫力を高めることが歯周病の治療と予防につながります。すべての因子をなくすことは不可能ですが、できるところから治療していきます。歯周病は予防によってかなり進行を食い止めることができる疾患のひとつです。
最近は歯周病の治療技術も進歩し、かなり確立されてきたため、多くの歯が残せるようになっております。歯周病治療で一番大事なことは、自分の歯で物を食べることをあきらめないことです。歯周病は長い期間をかけて進行していくため、治療期間も長く、年単位で行われることがほとんどです。
■歯周病治療の流れ
1.応急処置
歯肉が腫れている場合の排膿処置,かみ合わせの調整,投薬などです。必要に応じて行います。
2.プラーク・コントロール
プラークコントロールは歯周病治療の成功のためには特に重要となります。患者さんのコントロールの現状や,
口腔内の状況を把握し,患者さんに合ったプラーク・コントロール法を説明します。
3.スケーリング
歯ぐきより上の見えている部分の歯石を除去します。
4.再評価検査
一通り歯石を取り終えたところで,歯肉がどの程度健康を取り戻しているか検査します。
その結果が良好であれば,歯周治療はメインテナンスに移行します。しかし,問題が残っている部位については
治療法の再検討をします。
5.スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
検査結果に基づき、口の中を何回かに分けて、局所麻酔を行い,歯ぐきに隠れている歯石を徹底して取り除きます。
6.再評価検査
再度歯周病の検査を行い、改善状況を確認します。結果が良好であればメインテナンスへ移行します。たいていの 人は、ここまでの治療でメインテナンスへ移行します。問題の残っている部位については再度検討し、場合によっ ては歯周外科手術を行います。
7.歯周外科手術
これまでの治療で治りきらなかった部位に対し歯周外科手術を行います。病気の原因が目で確かめられるよう、
歯と歯肉の間に切開を入れて歯槽骨からはがし、歯石や炎症性の物質を取り除き、歯槽骨の整形、移植を行いま す。より多くの骨を作るために移植剤を入れることもあります。時間は1回の手術で1~2時間程度です。
その日に帰っていただき、通常の生活を送ることが出来ます。 歯周外科手術はさまざまな術式があり,状態に応じ て使い分けられます。
8.メインテナンス
歯周病は、体質・生活習慣による要因が大きく、治療が終わっても再発するリスクがあります。毎日のブラッシン グと規則正しい生活,そして歯科医院による定期検診を行い、安定した状態を維持していくことが大切です。